旋盤は、日本の製造業の現場において、多くの工業部品の加工に使用されており、日本のモノづくりを支えている工作機械の一つと言っても過言ではないでしょう。旋盤加工は、テーパー加工やねじ切り加工・突切り加工などの複雑で精度の高い加工ができますが、初心者が使用するには、かなり難しい機械と言えます。そこで今回は、旋盤の種類や作業のコツと注意点について、初心者向けに簡単に概要を解説します。
1. 旋盤加工について
はじめに、旋盤加工がどのようなものか解説します。
1-1. 旋盤とは?
旋盤とは、金属を加工する工作機械の一つで、加工物を回転させて、固定されている「バイト」と呼ばれる切削工具で切削加工をするものです。主な加工としては、「外丸削り」・「中ぐり」・「穴あけ」・「ねじ切り」・「突起り」と呼ばれる加工があり、多くの工業部品が旋盤によって加工されています。なお、旋盤は以下のような部品で構成されています。
- 主軸(チャック):工作物を固定して回転させる部分
- 往復台:バイトを搭載する刃物台を備えた台で、工具を水平に移動させる役割を果たす
- 心押し台:工作物を主軸の反対側から支える台(穴あけ加工を行う際のドリル取付け部分にもなる)
- ベッド:主軸や往復台、心押し台などを支える機械の基礎となる土台で、往復台を左右にスライドさせる役割を果たす
1-2. 旋盤の種類
旋盤にはいくつかの種類が存在し、加工物の形状や素材、大きさなどによって使い分けられています。
- 汎用旋盤(普通旋盤):標準的な構造の旋盤
- NC旋盤:NC装置(数値制御装置)が組み込まれた旋盤
- 卓上旋盤:作業台の上に載せて使用する小型の旋盤
- 立旋盤:汎用旋盤の主軸が横向きなのに対して、主軸が垂直に向いた旋盤
- 正面旋盤:大型の主軸が正面を向いている旋盤
2. 旋盤加工のコツについて
初心者が旋盤加工作業を行うにあたり、はじめにおさえておきたい3つのコツについて解説します。
2-1. 図面を正しく理解する
旋盤で切削加工をして部品を作るためには加工図面が必要です。そのため、旋盤加工作業を行う上で最初に重要となるのが、図面を正しく理解することです。図面には、さまざまな数字や記号などの指示事項が記載されており、この内容が理解できないと加工作業を進められません。作業前に、しっかりと図面を理解し、作業中も見落としが無いよう図面を確認しながら、慎重に作業を進めることが大切です。
2-2. 計測器を正しく使用し加工物を正確に計測する
旋盤加工では、加工物の作業前の計測や、作業途中及び作業後の計測が付き物となります。計測器も、ノギスやマイクロメータなどのさまざまなものがあります。これらの計測器を正しく使用し、加工物を正確に計測することが旋盤加工では非常に重要です。
2-3. 切削条件を適切に設定する
旋盤加工では、「回転数」・「切り込み量」・「送り量」の3つの切削条件を適切に設定する必要があります。回転数は、加工物の仕上がりや工具の寿命に影響し、回転数が多いほど短時間で加工物の表面がきれいに仕上がりますが、工具の寿命が短くなってしまします。また、使用するバイトによって推奨される切削速度が決められているほか、加工物の材質や形状によっても適切な速度が変わってきますので、これらの切削速度から旋盤の回転数を計算する必要があるのです。 切り込み量は、加工物を削る量を指します。送り量は、主軸が1回転する間に刃物が移動する量のことで、送り量を大きくするほど加工時間は短縮されますが、切削面の仕上がりは粗くなります。このように、切削条件を適切に設定するには、経験と知識が必要となりますので、慣れないうちは熟練者に確認しながら作業するようにしましょう。
3. 旋盤加工作業の注意点について
旋盤加工作業で知っておきたい注意点についても、作業上の観点と安全上の観点から紹介します。
3-1. 作業上の注意点
加工を行う際に、加工物が熱を持ってしまうと、変形や切子が飛ぶなどの問題が発生しやすくなりますので、切り込み量や油の当たり方などを調整して熱を持たせないよう注意が必要です。加工物の材質や加工内容に合った刃物を選定することも大切です。また、バイトと加工物の中心の高さが合っていないと、うまく切削できず削り残しが発生したりしますので、調整板などを使ってきっちり高さを合わせなければなりません。
3-2. 安全上の注意点
旋盤は危険を伴う工作機械であることから、使用する際には、安全面においても十分な注意をはらうことが重要です。作業者は、旋盤使用時には、とくに以下のような点に注意をするようにしましょう。
- 工作物の取付けは確実に行う。
- 重さの偏っている物を加工する際には必ず「つりあいおもり」を付けて全体のつりあいをとっておく。
- バイトの取替えは、必ず機械を停止してから行う。
- バイトの取付けは確実にし、不確実な状態で作業を行わない。
- 切りくずの処置を素手で行わない。
- 切りくずが工作物に絡みついたときは機械の運転を停止してから取り除く。
- 工作物の計測を行うときには必ず機械を停止してから行う。
- 回転している工作物の掃除を行わない。
4. まとめ
初心者が旋盤加工ではじめにおさえておくべきコツとしては、加工図面を正しく理解し、計測器を正しく使用して加工物を正確に計測すると共に、回転数・切り込み量・送り量の3つの切削条件を適切に設定することが挙げられます。また、作業上の注意点や安全上の注意点についてもご紹介しましたので、これから旋盤を使用し始める方は、ご参考になれば幸いです。 「有限会社岩井鐵工所」は富山県黒部市に工場を構え、金型部品の旋盤加工を中心に、金属加工を幅広く承っております。正社員も募集しておりますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。